板前の転職方法を解説！必要なスキルやキャリアアップ方法も

板前の転職市場の動向

板前の転職市場の動向をみていきます。

和食の無形文化遺産登録でニーズ増

2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。和食は自然の恵みに感謝して、新鮮な海の幸や山の幸などを使う日本の伝統的な食文化です。和食への注目度が上がっているため、板前のニーズも増加していると考えられます。

板前とは、和食や日本料理を作るプロフェッショナルな料理人です。会席料理や天ぷら料理など本格的な和食や日本料理を味わうには板前の存在が欠かせないため、国内外で活躍の場が増えています。

海外の日本食レストラン2年で約2割増

農林水産省の調査によると、令和5年の海外の日本食レストラン数は、令和3年から約2割増えて18万7,000店でした（※1）。世界各地の増減の割合はこちらです。

地域	増減割合	増減した理由
アジア	2割増加	日本食人気の高まり
中南米	約2倍の伸び	日本のアニメなどの影響による日本食需要の増加多数の店が検索可能になったため
欧州	約2割の増加	日本食人気の高まりチェーン展開の企業の進出
北米	約1割の減少	コロナ渦の影響など

世界的に日本食レストランが増えています。

※1.海外における日本食レストラン数の調査結果（令和5年）の公表について｜農林水産省

板前の有効求人倍率は約5倍

日本食レストランが世界的に増えている一方で、国内では板前が不足しています。厚生労働省の調査によると、板前の有効求人倍率は4.94倍です（※2）。有効求人倍率とは、求職者1人あたりの求人数のことです。

有効求人倍率4.94倍ということは、板前1人につき約5件の求人があるということになります。なお、令和6年6月の一般職業紹介状況の有効求人倍率は1.23倍です（※3）。板前は、ほかの職種より求人が多いといえます。

※2.日本料理調理人（板前）｜厚生労働省

※3.一般職業紹介状況(令和6年6月分)について｜厚生労働省

板前に求められるスキル

板前に求められるスキルを振り返りましょう。

手先が器用で細かい作業ができる

板前に求められるスキルのなかで重要なもののひとつは、手先が器用で細かい作業ができることです。和食や日本料理は、味もさることながら、見た目の美しさや盛り付けのバランスも求められます。

鮮魚や野菜などの食材を美しく切ることや、飾り切りといった細やかな包丁さばきをするために、手先の器用さは必要です。板前の仕事にゴールはないといわれることもあります。これらの技術を向上させるために、日々努力する姿勢も大切です。

立ち仕事をこなす体力

板前の仕事は、ほとんどが立ち仕事です。食材の下ごしらえや調理、盛り付けなど、すべて立ったまま行います。そのため、板前には長時間立ち続けて仕事をする体力が必要です。

体力があることで、連休などの忙しい時期も乗り越えやすくなるため、料理の品質を安定して保つことができます。

板前に限らず、立ち仕事が多い職種は数多くあります。販売職や介護士、工場の製造などの仕事も、座る機会があまりなく、立ち仕事が多い職種といえます。

調理師免許などが必要

板前には、調理師免許やふぐ調理師免許が必要になることがあります。免許があることで、幅広い業務につけます。これらの免許の概要を解説します。

免許の種類	概要
調理師免許	安全な料理が提供できる知識と技術は身についていると証明できる国家資格
ふぐ調理師免許	ふぐの種類と毒の位置を把握し、安全に捌けると証明できる業務独占資格。ふぐは有資格者しか捌くことができない

ふぐ調理師免許は、都道府県によって呼び名が異なります。

板前のキャリアアップのための戦略

板前がキャリアアップしていくための戦略について考えます。

修行先を選んでスキルを磨く

キャリアアップするには、日本料理店などの調理場での修行が必要です。修業は5段階あります。

修行	内容
1.追い回し・下済み	掃除や洗い物をして現場の流れを把握する
2.八丁場・盛り付け	器に盛る作業をして盛り付けの基本を学ぶ
3.焼き場・揚げ場	食材の加熱調理を行なう
4.蒸し場・煮方	料理の味付けを行なう
5.板場	刺身の切り付けのほか、鮮魚の切り付けを行う

「焼き場でしっかり修業したい」という希望があれば、その修行ができる修行先を選ぶのもひとつの方法です。

板長や店長でマネジメントを学ぶ

板前としてキャリアアップすると、板前をまとめる「板長」というポジションにつきます。板長や店長になると、厨房や店舗、従業員の管理など通じてマネジメント能力がより磨かれます。板長のおもな業務は下記のとおりです。

• 新メニューの開発と価格設定
• 食材の仕入れ
• 従業員の管理
• 従業員育成のためのマニュアル作成
• 厨房の管理
• 接客（カウンターがある店舗の場合）

これらの経験をつむことで、より大きな店舗の板長になることや独立する夢も実現に近づきます。

給料や待遇のいい職場へ転職

スキルが向上し、幅広い業務をこなせるようになると、現職でのキャリアアップに加えて、給料や待遇がよりよい店舗へ転職するという選択肢もあります。板前は数多くの店舗から必要とされています。

店舗によって、板前の給料や待遇はさまざまです。ランチやディナー、深夜営業などメインの勤務時間も異なります。現状に満足できない場合や、より自分の希望に合った職場環境で働きたい場合は、ほかの店舗の待遇を確認するのもいいでしょう。

求人サイトで求人を確認してみると、求人票に記載されている以上のことを知りたくなるものです。そんな時は専門の転職エージェントに相談してみると良いでしょう。例えば、飲食業界専門の転職エージェントは板前の転職市場にも詳しく、面接対策などもサポートなども充実しています。

板前が転職で成功する秘訣

転職を成功させるための秘訣を3つピックアップしました。

板前の経験や実績を重ねる

板前が転職成功するには、板前としての経験と実績を重ねて、スキルを高めることが重要です。

有名レストランや一流ホテルなどでは、一流の板長が働いていることが多く、より高いスキルを学ぶ機会に恵まれます。ライバルは多いですが、互いに刺激しあって技術を向上させることが可能です。一流店での経験は、転職時にアピールポイントとなることもあります。

一方、小さな店舗で働いている場合でも、入社後の早い段階から焼いたり味付けしたりする業務を任されることがあります。店舗の知名度は高くなくても、料理の一通りの工程を経験していることは大きな強みです。

有名店であれ、小さな店舗であれ、日々の業務を通して自分の強みを作っていきましょう。

職場選びのコツをおさえる

板前の職場選びのコツは、勤務時間と給料、休日数の3つをチェックすることです。各項目のチェックポイントをまとめました。

項目	ポイント
勤務時間	希望の勤務時間か確認。17時前に仕事が終わる店舗や終電時間を考慮してくれる店舗などがある
給料	板前の平均年収は358万9,000円（※3）。仕事内容や休日数も考慮して比較検討する
休日数	年間休日数を確認。週休2日制や年間休日120日以上の店舗もある

終電が気になる方は、終電を考慮してくれたり、バイクや車通勤を認めてくれたりする店舗を探しましょう。和食チェーン店のなかには、セントラルキッチンでおもな調理をし、店舗ではかんたんな調理しかしないところもあります。業務内容を確認することも大切です。

※3.日本料理調理人（板前）｜厚生労働省

求人サイトや転職エージェント活用

転職先選びは、求人サイトや転職エージェントの活用がおすすめです。転職エージェントを活用することで、店舗の労働環境などが確認できます。転職エージェント担当者が実際にその店舗に行って、店長や板長から求人情報についてヒアリングしていることが多いからです。

飲食店で働く板前のなかには「勤務シフトがしっかりしていないので労働時間が長い」「先輩が怖い」という悩みを抱えている方がいるようです。

転職エージェントを活用することで、事前に「勤務シフトがしっかり組まれているか」「人間関係や厨房はどのような雰囲気か」などが確認できます。転職エージェントは、公式サイトから登録を申込み、面談後に求人を紹介する、という流れが一般的です。

板前は日本料理のスペシャリスト

板前さんとは、有効求人倍率が約5倍で、飲食店から必要とされている職種です。板前になるには手先の器用さと、立ち仕事がこなせる体力が求められます。板前は和食を世界に広めることのできる意味のある仕事です。

飲食業界に強い転職エージェントであるフードコネクトは板前の求人も豊富に保有しており、面接対策など徹底したサポートも可能です。

「板前としてほかの飲食業態の店舗に転職したい」「給料のいい飲食店で働きたい」と思っている方は是非一度、ご相談ください。